国家賠償請求事件 一審判決要旨

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    以下は、本日言い渡された国家賠償請求事件の一審判決についての、裁判所作成の判決要旨です。

     【注】これは判決ではありません。

    平成26年1月15日午後3時判決 言渡 615号法廷
    平成23年(ワ)第15750号,平成23年(ワ)第32072号,平成24年(ワ)第3266号 公安テロ情報流出被害国家賠償請求事件
    口頭弁論終結日・平成25年9月11日
    裁判長裁判官始関正光,裁判官進藤壮一郎,裁判官宮崎文康
    原告 原告1ほか16名,被告国,東京都

    本判決の要旨

    第1 主文

    1 被告東京都は,原告ら(原告4を除く。)に対し,それぞれ550万円及びこれに対する平成23年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    2 被告東京都は,原告4に対し,220万円及びこれに対する平成23年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    3 原告らの被告東京都に対するその余の請求及び被告国に対する請求をいずれも棄却する。
    4 訴訟費用の負担(略)
    5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

    第2 事案の要旨

    本件は,イスラム教徒である原告らが,警視庁,警察庁及び国家公安委員会が,.皀好の監視など,原告らの信教の自由等の憲法上の人権を侵害し,また,いわゆる行政機関個人情報保護法や東京都個人情報保護条例に違反する態様で個人情報を収集・保管・利用したこと,△修慮紂ぞ霾鶸浜上の注意義務違反等によりインターネット上に個人情報を流出させた(本件流出事件)上,適切な損害拡大防止措置を執らなかったことが,それぞれ国家賠償法上違法であると主張し,警視庁の責任主体である被告東京都並びに警察庁及び国家公安委員会の責任主体である被告国に対して,国家賠償法1条1項等に基づき,それぞれ1100万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成23年7月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

    本件の争点は,警視庁及び警察庁による個人情報の収集・保管・利用についての国家賠償法上の違法性の有無(争点1),本件流出事件についての国家賠償法上の違法性の有無(争点2),原告らの損害(争点3),国家賠償法6条の有効性及び原告らの国籍国における相互保証の有無(争点4)である。

    第3 当裁判所の判断の要旨

    1 争点1について

    (1)本件において流出したデータ(本件データ)は,警察が作成したもので,警視庁公安部外事第三課が保有していたものであると認められる。

    本件データには原告らの個人情報が含まれており,原告らには,本件データ中の履歴書様書面等において,所属するモスクの名称が記載されている者,「容疑」欄に,特定のイスラム教徒との交友関係等について記載されている者が多数存在する。中には,宗教的儀式又は教育活動への参加の有無・程度について記載されている者も存在する。

    ほとんどの原告らについては,捜査員が直接に把握活動をすることによって,モスクへの出入状況や宗教的儀式又は教育活動への参加の有無についての情報が収集され(本件モスク把握活動),また,その余の情報は,法務省入国管理局等の関係機関等から提供を受け,又は原告らに対して接触や捜索等を行う過程で収集されたものであると認められる。

    (2) 国家によって信教の自由が侵害されたといい得るためには,国家による信教を理由とする法的又は事実上の不利益な取扱い又は強制・禁止・制限といった強制の要素が存在することが必要であると解されるところ,本件の情報収集活動は,それ自体が原告らに対して信教を理由とする不利益な取扱いを強いたり,宗教的に何らかの強制・禁止・制限を加えたりするものではない。

    日本国内において国際テロが発生する危険が十分に存在するという状況、ひとたび国際テロが発生した場合の被害の重大さ,その秘匿性に伴う早期発見ひいては発生防止の困難さに照らせば,本件モスク把握活動を含む本件の情報収集活動によってモスクに通う者の実態を把握することは,警察法2条1項により犯罪の予防をはじめとする公共の安全と秩序の維持を責務とされている警察にとって,国際テロの発生を未然に防止するために必要な活動であるというべきである。また,本件の情報収集活動が,主としてイスラム教徒を対象とし,収集情報の中にモスクの出入状況という宗教的側面にわたる事柄が含まれていることは,イスラム教における信仰内容それ自体の当否を問題視していることに由来するものではなく,イスラム教徒のうちのごく一部に存在するイスラム過激派によって国際テロが行われてきたことや,宗教施設においてイスラム過激派による勧誘等が行われたことがあったことといった歴史的事実に着眼して,イスラム過激派による国際テロを事前に察知してこれを未然に防ぐことにより,一般市民に被害が発生することを防止するという目的によるものであり,イスラム教徒の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないと認められる。他方,本件モスク把握活動は,捜査員が自らモスクへ赴いて,原告らのモスクへの出入状況という外部から容易に認識することができる外形的行為を記録したにとどまり,当該記録に当たり,強制にわたるような行為がされていない。

    これらを総合すると,本件の情報収集活動は,国際テロの防止のために必要やむを得ない措置であり,憲法20条やこれを受けた宗教法人法84条に違反するものではない。

    (3) 警察は,実態把握の対象とするか否かを,少なくとも第一次的にはイスラム教徒であるか否かという点に着目して決していると認められ,この点で信教に着目した取扱いの区別をしていたこと自体は否めないが,情報収集活動の目的,その必要性,これによる原告らの信教の自由に対する影響に照らすと,信教に着目した取扱いの区別という憲法14条1項後段の列挙事由にわたる区別であることや,精神的自由の一つである信教の自由の重要性を考慮しても,その取扱いの区別は,合理的な根拠を有するものであり,同条1項に違反するものではない。

    本件の情報収集活動自体は,国家が差別的メッセージを発するものということはできず,原告らの国家から差別的に取り扱われない権利ないし法的利益を侵害したともいえない。

    (4) 警察には,国際テロ防止のための情報収集活動の一環として,モスクに出入りする各人について,その信仰活動を含む様々な社会的活動の状況を広汎かつ詳細に収集して分析することが求められ,他方で,本件モスク把握活動によって把握される原告らの行動が,第三者に認識されることが全く予定されていないものというわけではないことなどに照らすと,本件の情報収集活動によって収集された原告らの情報が社会生活の中で本人の承諾なくして開示されることが通常予定されていないものであることを踏まえても,本件の情報収集活動は国際テロの防止の観点から必要やむを得ない活動であって,憲法13条に違反するものではない。

    また,適法な活動により得られた情報を警察が保有して分析等に利用することができることは当然であるから,当該情報の保有が憲法13条に違反することもない。

    (5) 本件データのうち原告らに関する部分の収集・保管・利用は,法律の留保原則や,いわゆる行政機関個人情報保護法及び東京都個人情報保護条例に違反するものでもない。

    2 争点2について

    (1) 本件データは,警察職員(おそらくは警視庁職員)によって外部記録媒体を用いて持ち出されたものと認められる。

    (2) 警視総監としては,いったん情報が外部へ持ち出され,その情報が外部のパソコンに接続されれば,ウィニー等を通じてインターネット上に流出し,不特定多数の者に伝達し,それによって原告らに多大な被害を与えることおそれがあることが十分に予見可能であったから,その情報が絶対に漏えいすることのないよう,徹底した漏えい対策を行うべき情報管理上の注意義務を負っていたにもかかわらず,外事第三課内におけるセキュリティ規程等を実際に遵守するよう徹底する管理体制は不十分なものであったとみざるを得ず,このことが,外部記録媒体を用いたデータの持出しにつながったと認められるから,警視総監には,情報管理上の注意義務を怠った過失があって,国家賠償法上の違法性があり,被告東京都には,本件流出事件により原告らが被った損害を賠償する責任がある。

    (3)警察庁には監査責任者が置かれ,警察情報システムに係る監査を行うものとされているが,その監査権限には限りがあり,監査責任者が恒常的に監査を怠っていたとか,監査によって不十分な点を発見したのにその指摘を怠ったというような事情は認めることができないから,被告国には本件流出事件発生の責任はない。

    (4) 警視庁及び警察庁は,本件流出事件の発生後,原告らの個人情報を含め流出したデータを全面的には削除することができなかったものの,尽くすべき義務は尽くしたものと認められるから,被告らにはこの点についての責任はない。

    3 争点3について

    本件で流出した原告らの個人情報の種類・性質・内容,当該個人情報がインターネットを通じて広汎に伝播したことなどを鑑みると,原告らが受けたプライパシーの侵害及び名誉棄損の程度は甚大なものであったといわざるを得ず,原告らの慰謝料額を各500万円(弁護士費用各50万円)と認める。ただし,原告4は,本件データ中の書面においてテロリストであるような表記をされた原告3の妻として,氏名,生年月日,住所のみが流出したにすぎないことから,慰謝料額を200万円(弁護士費用20万円)と認める。

    4 争点4について

    外国人である原告らの国籍国(モロッコ,イラン,アルジエリア,チュニジア)との聞には少なくとも本件事案に関する国家賠償法6条の相互保証があると認められ,これらの外国人原告らも,被告東京都から損害賠償を受けることができる。

    以上


    2011年11月8日付原告ら準備書面(1)

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       本訴訟は公安警察の捜査手法の合憲性、適法性を問うものです。その社会性に鑑み、弁護団の主張内容を本ブログを通じて順次公開いたします。主張内容を社会において共有するとともに幅広く批判を受けることで今後の訴訟活動に反映させてゆきたいと考えております。また、本訴訟における被告らの応訴態度それ自体に資料的価値があると考え、被告らの主張内容についても公開を検討しております。
       まずは、2011年11月8日付原告ら準備書面(1)を公開いたします。


      平成23年(ワ)第15750号 公安テロ情報流出被害国家賠償請求事件

      平成23年(ワ)第32072号 公安テロ情報流出被害国家賠償請求事件

      原告 原告番号1 外15名

      被告 国、東京都

       

      準 備 書 面 (1)

       

      2011年11月8日

       

      東京地方裁判所民事第41部合議1B係 御中

       

      原告ら訴訟代理人弁護士           梓 澤 和 幸

      同                上 柳 敏 郎

      同                西 岡 弘 之

      同                難 波   満

      同                岩 井   信

      同                山 本 志 都

      同                癲ゞ供 ̄Αゝ

      同                河  健一郎

      同                福 田 健 治

      同                小 松 圭 介

      (略)                      井 桁 大 介

       

       被告国及び被告とは、各準備書面(1)において、原告ら主張の事実の一部、特に本件流出資料が警視庁公安部外事第三課の捜査資料か否かという本件訴訟の核心部分について、認否を留保している。

      かかる応訴態度は極めて不当であり、また訴訟上の信義則に反するものである。原告らは、本準備書面において、この点に限り意見を述べ、被告らに対し、警視庁公安部外事第三課の捜査資料か否かについて認否するよう強く求める。なお、各準備書面(1)に対する反論は、被告都のその余の主張を待って行う予定である。

       

      第1 意見の趣旨

      1 本件流出資料(甲1)は、その方式及び趣旨並びに本件発覚の経緯等から、公務員が職務上作成したものであり、真正に成立した公文書と優に認められるものである。

       被告らは、本件の解明ならびに被害者である原告らの速やかな救済とその慰謝のために、留保部分について速やかに認否すべきである。

       

      第2 意見の理由

      1 認否を留保することは、原告ら被害者を苦しめるものである

       警察庁、警視庁をはじめとする警察組織は、原告らに対し、訴状記載の各行為により苦しめたばかりか、今回、認否を一部保留することで、再び苦しめた。

       被告国(警察庁)は、2010年12月9日、「個人情報が掲出された方については、相手方の心情に十分配慮し不安感の除去に努めるほか、・・・的確な対応に努めるよう」指示し、被告都(警視庁)も同旨の副総監通達を発出した(甲2・8頁、被告準備書面(1))。

       しかし、本件訴訟で被告国がまずなしたことは、原告らが「個人情報が掲出された方」であることを十分承知しておきながら、「国籍を明らかにせよ」と求めてきたのである(被告国・答弁書)。これは原告らの心情を十分配慮しないどころか、あえてその心情を逆なでするものであって、警察庁の指示に反する訴訟行為というほかない。

       そして、被告らは、具体的認否については核心部分において留保しつつ、責任がないことについては極めて饒舌に抽象的に主張し、その無慈悲性、非人間性を再度露わにした(被告・準備書面(1))。これでは、本件における個別具体的な真相は一切明らかにならず、原告らは、個人情報がどのようにして警察職員に「取り扱われ」たかわからず、個人情報が「掲出されっ放し」で、誰も責任を取らないままになる。法執行者には司法上の高潔性(judicial integrity)が求められるところ、被告らの認否留保はこの資質が著しく欠けることを示すものである。

       

      2 被告らは「流出」を認めている 酬抻…の謝罪

       被告国は、「警察庁では、警察職員が扱った蓋然性が高い情報が含まれている情報がインターネット上に掲出されたことにより、不安や迷惑を感じる方々が現にいるという事態に至ったことは、極めて遺憾であると考えている」と主張する(被告国・準備書面(1))。

       しかし、警察職員が扱った情報がインターネット上に掲出されたのであれば、「極めて遺憾」であるのは当然である。逆に、警察職員が扱った情報が掲出されなかったのであれば、被告国が、「極めて遺憾」であると考える理由はない。

      したがって、警察庁が「極めて遺憾」と考え、それを表明したことは、警察職員が扱った情報がインターネット上に掲出されたことを警察庁が認めたことにほかならない。現に、警察庁は、2010年12月24日の記者会見において、桜沢健一参事官が「『申し訳なく思っています』と謝罪して頭を深々と下げ」(甲6の2)、報道機関は「警視庁、流出を謝罪」「内部文書と認める」と広く報道したのである。(甲6の1)。

      警察庁が「極めて遺憾」であると考え、「『申し訳なく思っています』と謝罪して頭を深々と下げ」た事実は、被告らが本件「流出」を認めたことにほかならない。

       

      3 被告らは「流出」を認めている◆夙詭保全法案の立法事実としての「利用」

       現在、被告国は、治安や外交など国の重要な情報を漏洩した公務員の罰則を強化する秘密保全法案(仮称)の法案化作業に着手している。

      これは、2010年12月、内閣官房長官が立ち上げた「政府における情報保全に関する検討委員会」のもとに「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」を置き、2011年8月、同有識者会議が「秘密保全法制を早急に整備すべきである」とする報告書を出し、これを受けて法案化作業を進めているものである。同法案を提言した有識者会議は、政府(内閣官房)が事務局を担っていた。そして、同事務局が用意した資料を本準備書面にも添付した(平成23年8月8日付「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」[別添2]参考資料(事務局作成)。書証として今後提出予定)。

       この資料は、「主要な情報漏えい事件等の概要」と題して、本件についても、「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案」として公務員による他の情報漏えい事件と同列に紹介し、「国際テロ対策に係るデータがインターネット上へ掲出されたもの。当該データには、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていると認められた」としている。

       まさに、被告国は、本件を秘密保全法案の立法事実として「利用」しており、この事実は、被告国が本件「流出」を認めたことにほかならない。

       

      4 認否を留保しながら否認ないし争うことは、訴訟上の信義に反する

      被告国は、認否を留保しながら否認ないし争うことは、訴訟上の信義に反する。例えば、被告国は、認否を留保しながら、「『イスラム諸国会議機構(OIC)の国籍を有する者及びその他の国籍を有するムスリム』の、国籍、氏名、生年月日、住所等を、横断的・網羅的・機械的・体系的に収集する作業を、大規模かつ組織的に実施していたとの点は否認」とする。

       しかし、本件流出情報には、次のような記載がある(甲1の1)。

      「1 実態把握の対象

           イスラム諸国会議機構(OIC)の国籍を有する者及びその他の国籍を有するムスリム

      「2 報告事項

         (1)必要事項

           々饑

           ∋疚

           生年月日

           そ蚕蝓粉鋲發凌卦対象外国人等は、必ず居住確認の有無を記載すること)

           ノ」

      すなわち、本件流出資料には、実態把握の対象を「イスラム諸国会議機構(OIC)の国籍を有する者及びその他の国籍を有するムスリム」として、それ以上限定していないこと、巡回連絡の手法で網羅的に実態把握していること、「把握した場合は全て公安係に報告すること」「巡回連絡カードが提出されていても必ず人定を確認すること」「新規対象外国人等は、必ず居住確認の有無を記載すること」等としていること、注意点として「宗教に関する言動は慎む」「外国人の狙い撃ちと思われないよう言動や手法には注意する」ことが挙げられているのである。

      したがって、本件流出資料の方式、趣旨からすれば、「『イスラム諸国会議機構(OIC)の国籍を有する者及びその他の国籍を有するムスリム』の、国籍、氏名、生年月日、住所等を、横断的・網羅的・機械的・体系的に収集する作業を、大規模かつ組織的に実施していた」ことが優に認められるのである。

      まさに、被告らの否認ないし争う旨の主張は、本件流出資料についての認否をしないことで可能になっているのであって、このような訴訟上の信義に反する訴訟行為は、許されてはならない。

       

      5 まとめ

      以上のとおり、本件流出資料(甲1)は、その方式及び趣旨並びに本件発覚の経緯、特に警察庁が記者会見をして一応の謝罪を行い、国が秘密保全法案の立法事実として本件を積極的に利用していること等から、公務員が職務上作成したものであり、真正に成立した公文書と優に認められるものである。

       にもかかわらず、被告国が、具体的認否を留保することで、抽象的に否認ないし争うとすることは訴訟上の信義に反するだけではなく、本件の被害者である原告らを苦しめ、もてあそぶものであって、客観義務を負い司法上の高潔性が求められる被告らの訴訟行為として許されない。

      したがって、被告らは、本件の事案の解明ならびに被害者である原告らの速やかな救済とその慰謝のために、留保部分について認否すべきである。

       

      以上


      出版等禁止仮処分:東京高裁抗告審決定要旨

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         決定要旨

        主文
         本件抗告を棄却する。

        理由の要旨
        1 当裁判所も,本件仮処分決定は認可されるべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原決定の「理由」中の「第2 当裁判所の判断」に説示されたとおりであるから,これを引用する。
        2 私人が警察からテロリストとの関係を疑われているという事実及びその者の住所,氏名,職業,学歴,身体的特徴と顔写真,交友関係,宗教的活動等の詳細な個人情報は,これをみだりに公表されない利益がプライパシーとして法的保護に値するというべきであるが,正当な理由があれば,その公表が許されるべき場合もあると考えられる。そして,これを公表することを正当とする利益をこれを公表されない法的利益が優越するとされる場合には,その公表は不法行為を構成し(最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁参照),その者は,当該事実の公表によって重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは,その出版等の禁止を命じる仮処分決定を求めることもできるものと解するのが相当である。
         この点に関し,抗告人は,言論出版の自由への重大かつ危険な制約である出版差止決定は許されるべきではないと主張する。確かに,言論出版の自由その他の表現の自由は,十分に尊重されなければならないものであるが,常に他の基本的人権に優越するものではなく,ある者に不利益な事実を公表することが憲法の保障する表現の自由の範囲内に属するものとして不法行為責任を追及される余地がないものと解することはできないし(前掲最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決参照),表現行為の事前抑制たる出版等の禁止についても,厳格かつ明確な要件の下においては許される余地があるというべきである(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。
        3 そこで検討するに,警察からテロリストとの関係を疑われている者として,氏名,現住所,住所歴,本籍,家族関係,学歴,職歴,身体特徴と顔写真,容疑情報としての交友関係とこれに関する聴取内容,出入国歴,モスクへの出入状況等の詳細な個人情報が記載された本件記事に係る事実は,相手方らにとってこれを秘匿する利益の大きなプライパシーに当たるものと解されるのであって,このような事実をみだりに公表されない利益は,十分な法的保護に値するものである。
         他方,抗告人において,相手方らの詳細な個人情報を明らかにしてそのプライパシーを公表する内容の記述をしなければ,本件書籍で公安警察の違法捜査の実態を明らかにするという目的が損なわれるとはいえないことは,原決定が説示するとおりである。
         また,抗告人は,相手方らの実名その他の個人情報を掲載したのは,相手方らにそのプライパシーに係る情報が公安警察のリストにファイルされている事実を知らせることを目的とするものであると主張するが,そのような目的の達成のためには,相手方らのプライパシーをそのまま公表する必要はなく,その公表に合理的な理由がないことも,原決定が説示するとおりである。
         さらに,インターネット上に流出した情報であっても,これが書籍としてまとめられて出版等されることになれば,より広範な読者等の目に触れることが容易になると考えられるところであるから,本件記事を含む本件書籍の出版等によって,相手方らは,重大にして著しく回復困難な損害を被るというべきであり,この点に関する抗告人の主張は理由がない。
         なお,抗告人は,原決定及び本件仮処分決定は必要な範囲を超えて出版の差止めを命じるものであるとも主張するが,原決定及び本件仮処分決定が出版等を禁止すべきものとした範囲は,相手方らのプライバシーの保護に必要な限度にとどまるものであると認められるのであって,抗告人の上記主張は採用することができない。
        4 以上によれば,抗告人による本件記事を含む本件書籍の出版等は,相手方らのプライバシーを侵害し,かつ,相手方らに重大にして著しく回復困難な損害を被らせるものであって許されず,厳格かつ明確な要件の下にその禁止を命じた本件仮処分決定及びこれを認可した原決定は,いずれも正当であり,本件抗告は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり決定する。


        『流出「公安テロ情報」全データ』に対する出版禁止等仮処分について 〜東京高裁も出版等禁止命令を維持〜

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          2011年6月1日

          関係各位

          『流出「公安テロ情報」全データ』に対する出版禁止等仮処分について
          〜東京高裁も出版等禁止命令を維持〜

          公安テロ情報流出被害弁護団
          弁護士    梓澤和幸、上柳敏郎、西岡弘之、岩井信、
          山本志都、盒怯Φ、河健一郎、
          福田健治、井桁大介、小松圭介

           昨日(5月31日)、東京高等裁判所第11民事部(岡久幸治裁判長)は、株式会社第三書館が出版した『流出「公安テロ情報」全データ』〔初版〕について、東京地方裁判所が2010年11月29日に発した出版禁止等仮処分命令に関する抗告審において、抗告を棄却し、出版差止めを命じた原決定を支持する旨の決定を行いました。
           これで、同書籍については、東京地裁・東京高裁の計6つの決定において、いずれも出版差止が認められたことになります。
           なお、警視庁による公安テロ情報流出事件の被害者は、同書籍の初版・第二版について、出版差止め及び損害賠償を求める本訴を東京地方裁判所に提訴したほか、5月16日には、国・東京都に対し、ムスリムに対する違法捜査及び情報流出の責任を追及する国家賠償請求訴訟を提起しています。

          【本件書籍の概要】
           上記書籍は、株式会社第三書館が、2010年10月末に発生した警視庁公安部外事第三課からの国際テロ捜査に関する流出文書を、ほぼそのまま掲載して出版したもの。11月25日に初版が出版され、同月29日には被害者からの申立てにより東京地方裁判所が出版禁止等仮処分命令を発令。第三書館は、12月25日、個人情報をほぼ全面的に削除した第三版を出版している。

          【本件に関する問い合わせ先】
          東京都千代田区神田神保町2-3-1岩波書店アネックス7階 東京駿河台法律事務所
              Tel: 03-3234-9133 / Fax: 03-3234-9134
              弁護士 河健一郎
              弁護士 福田 健治

          国家賠償請求:訴状(3/3)

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             第6 国の責任−共同不法行為
            1 警視庁の本件情報収集活動及び本件保管態様は警察庁の指揮の下で行われた
             被告国の機関である警察庁には、「国の公安に係る事案についての警察運営・・・に関しては、内閣の治安責任を明確ならしめるため、当然」に公安事案に関する指揮・監督権限が認められる(田上穣治『警察法』286頁(有斐閣、新版初版、1994年))。本件捜査が「国の公安に係る事案についての警察運営」に関するものであることは明らかであるから、警察庁が本件捜査に関し警視庁に対する指揮・監督権限を有していたことも明らかである。
             また、本件捜査が警察庁の指揮の下で行われたことは以下の記載からも明らかである。
              (神13年9月21日付「テロ関連情報に基づく容疑者等の具体的追及要領」によれば、警視庁は、違法行為が認められないテロ容疑者及びその同行者の秘匿行動確認捜査に当たり、「警察庁へ連絡・指示を受け」、また「警察庁へ出国情報を速報」することとしていた(甲1の7)。
             ◆^γ慮の各モスクに対する監視は、「サミット直前期における本庁(引用者注:警察庁のこと)通達に基づき」行われていた。また、「警察庁からの下命案件」について個別の捜査も実施されていた(甲1の55・1p)。
              平成21年1月14日付「国際テロリズム対策課」作成に係る、「関東地域国テロ担当補佐等会議概要(1/9:警察庁)」によれば、警察庁の「国際テロリズム対策課長」によって「昨年末」に「20年通達」を発出しているところ、その内容には「OIC56カ国1地域を重点」として、「実態把握」をすることが指示され、かつ、当該実態把握の成果として、ムスリムの個人情報の収集率が明示されており、警察庁が警視庁をはじめとする各都道府県警察機関に対し、ムスリムを対象とした個人情報収集について通達を発出する等して指揮・監督していたことが認められる(甲1の5)。
            以上から、警視庁の本件捜査が、警察庁の指揮・監督の下でなされたことは明らかである。
             したがって、警察庁の上級機関である被告国は、被告都と共同不法行為責任を負う。

            2 警視庁の上記全ての違法行為(本件情報収集活動、本件保管態様、漏洩対策構築義務違反及び損害拡大防止義務違反)について、国家公安委員会には監督義務違反がある
             被告国の機関である国家公安委員会は、警察組織の監視機関として、「国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養、警察通信、情報技術の解析、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行うことにより、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持することを任務」とし、そのために各種事務について、「警察庁を管理する」義務を負う(警察法第5条第1項、第2項)。
             国家公安委員会は、上記「任務を遂行するために警察庁を管理」するとされ、警察庁に対する管理・監督権限を有する。また、「都道府県の地方警務官が国家公務員」とされることにより(警察法第56条第1項)、国家公安委員会には、国の公安に関して各都道府県警察に対する管理・監督権限を有しており、これにより国家公安委員会が警察運営の最終責任者であることが貫徹されている(前掲『警察法』282p等)。
             実際、警察刷新に関する緊急提言においても、国家公安委員会の警察事務に対する管理・監督権限について、「警察事務の執行が法令に違反・・(の)疑いが生じた場合には、その是正又は再発防止のため、具体的事態に応じ、個別的又は具体的に採るべき措置を指示することも、『管理』の本来の意味が上記のものである限り、なんら否定されないものというべきである。・・公安委員会の行う『管理』に内在するものとして、警察庁は、適宜、国家公安委員会に対して警察事務の執行につき所要の報告を行うべき職責を有し、また、国家公安委員会から報告を求められたときは、速やかにそれを行うべきものである」としている(甲8参照)
             以上からすれば、被告国の機関である国家公安委員会は、警察事務の執行において、捜査や捜査によって取得した情報の管理によって人権侵害が生じた場合には、その是正のために個別具体的な措置を執るべき義務を負うことは明らかである。
             然るに、警視庁公安部が本件各不法行為を行っていたのであるから、国家公安委員会としては、適切な是正措置を採らねばならなかった。
             それにもかかわらず国家公安委員会は漫然上記是正措置を怠り、本件人権侵害を引き起こしたのであるから、国家公安委員会に是正措置義務違反があることは明らかである。
             したがって、国家公安委員会の上級機関である被告国は、やはり被告都と共同不法行為責任を負う。

            第7 結語にかえて−本件訴訟の意義
             本件は、全国29万1475人(平成22年度の定員)の警察官を指揮統制下におく警察庁と、4万3156人(平成22年4月1日時点)の首都の警察官を指揮統制下におく警視庁による信教の自由等を侵害する公権力行使の問題を問う訴訟である。すなわち、日本とその首都の最大最強の公権力組織のあり方が問われているのである。
             侵害された基本的人権は、日本国内のムスリムの信教の自由、内面の宗教的思想・良心の自由であり、それと密接不可分のプライバシー権・名誉権である。もともとイスラム教は、仏教、キリスト教に並ぶ三大世界宗教とされ、世界中に15億人の信者を擁するが、本件訴訟で問題にしたいのは、一人ひとりの信者の内面の自由である信教の自由に公権力が干渉したことの重大な意味である。
             フランス人権宣言は、「人は自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する」(同第1条)とうたっている。世界人権宣言、国際人権規約(自由権規約)、日本国憲法も同旨の条項を擁する。
             かかる条項の核心にあるのは「個人の人格の根源的な平等性」である。自分の選択した生き方や考え方が根本的に間違っているという理由にもとづいて否定され干渉されるとき、そうした(中核にある)権利が侵害されている(長谷部恭男『憲法(新法学ライブラリ)』110頁(新世社、第5版、2011年)参照)。
             近代立憲主義のもとでは、人間は元来自律する平等な存在であり、その内面において完全に自由であり(日本国憲法第19条)、公権力はいかなる立法目的、行政目的を掲げたとしても、この内面の自由に立ち入ることは全く許されないのである。
             しかるに被告らはかかる内面に侵入し、個人の尊厳を根底から蹂躙したのである。この事実がかくも公然と明らかになった以上、被告らの行為を放置することは許されない。
            本件は、ひとりイスラム教徒だけの問題ではなく、基本的人権尊重を最高の理念とする日本国憲法下に生きる人々全て、さらにはそれを越えて世界人権宣言と国際人権規約によって結ばれている全世界の人々の関心を呼ばずにおかない訴訟である。
             本件訴訟はこの意味において重大な意義をもつことを強調しておきたい。
             以上より、原告らは、被告らに対し、連帯して、信教の自由、みだりに自身の信仰内容・信仰活動を国家に収集及び保管されない自由、プライバシーの自由並びに名誉権の侵害を伴う不法行為により生じた損害の賠償として、それぞれ金1100万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
              
            証拠方法

            甲第1号証の1〜114 本件流出資料
            甲第2号証  警察庁平成22年12月付「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案に関する中間的見解等について」
            甲第3号証  警視庁平成22年12月24日付「国際テロ関連データのインターネット上への掲出事案について」
            甲第4号証  毎日新聞2010年11月7日付記事
            甲第5号証  朝日新聞2010年11月28日付記事
            甲第6号証  朝日新聞2010年12月24日付記事
            甲第7号証  田原牧「無知の怖さ」世界2011年1月号
            甲第8号証  国家公安委員会ホームページ「警察法上の『管理』について」
                   http://www.npsc.go.jp/sasshin/suggestion/03.html

            付属書類

            1 訴状副本                   2通
            2 甲号証写し                  2通
            3 訴訟委任状                 14通
                                          以 上


            国家賠償請求:訴状(2/3)

            0
               第2 原告らの個人情報を収集する行為について
              1 外事第三課の人権侵害捜査の実態
               外事第三課は、警察庁の指揮・監督の下、何ら犯罪が発生していないにもかかわらず、‖腟模な個人情報の収集、▲皀好の継続的な監視、イスラムコミュニティの監視及び情報収集、ぅ譽鵐織ー会社・ホテル・金融機関・大学等からの個人・団体情報の収集により、原告らイスラム教徒を徹底した監視下に置いた上で、その個人情報を収集した(以下「本件情報収集活動」という)。 
                
              (1)大規模な個人情報の収集
               警視庁及び警察庁は、「イスラム諸国会議機構(OIC)の国籍を有する者及びその他の国籍を有するムスリム」の、国籍、氏名、生年月日、住所等を、横断的・網羅的・機械的・体系的に収集する作業を、大規模かつ組織的に実施していた(以下「ムスリムのリスト化」という。なお、ムスリムとはイスラム教徒のことである。甲1の1)。ムスリムのリスト化に際しては、外国人を雇用している企業・会社への定期訪問、イスラム諸国出身者が経営する店舗への「巡回連絡」も実施されていた。
               ムスリムのリスト化については、「イスラム諸国人の実態把握率向上を目的としてポイント制による特別表彰」まで用意されており、平成20年5月31日現在において、「都内のイスラム諸国外国登録数14,254の約89%」にものぼる「約12,677人」の個人情報が把握され、データ化されていた(甲1の4)。ムスリムのリスト化は、その後、2008年7月に開催された北海道洞爺湖サミットにおけるテロ予防名目で規模を全国に広げて継続され、最終的に「サミットまでに、OIC諸国出身者約72,000人(把握率98%)を把握」するに至っている(甲1の5)。
               当該活動の特色は、情報収集対象者の選定がムスリムか否かのみであることにある。ムスリムでありさえすれば、犯歴の有無、犯罪の嫌疑の有無、犯罪を行う蓋然性があるか否か、又は犯罪を行う蓋然性のある団体に所属しているか否かとは全く無関係に、機械的に個人情報を収集されていた。
               収集された各ムスリムの個人情報は、履歴書様の形式等にまとめられ、体系的に管理されるに至っていた(甲1の11の1〜20、1の12)。

              (2)モスクの継続的な監視
               警視庁及び警察庁は、2008年6月23日以降、北海道洞爺湖サミットに伴う国際テロ対策として「モスク出入り者の不審動向」を発見するという名目で捜査員43名の「モスク班」を構成し、東京都内の各モスクについて「午前8時30分から日没後の礼拝が終了する午後7時30分を目処に拠点員、行確員(引用者注:「行確」とは行動確認のこと)を配置し、モスク動向の把握、モスクへの新規出入者及び不審者の発見把握」を行っていた(甲1の50、1の51)。
               また、同時期頃、同じく洞爺湖サミットにおけるテロ対策を名目として、愛知県下の主要モスクを、各モスク2人の捜査員が、1つのモスクについては午前10時頃より午後10時頃まで、1つのモスクについては24時間体制で監視し、延べ3639名のモスクへの出入りを把握するとともに、「行動確認を44回実施し」、彼らの同日の到着先である「没先等23件を確認」していた。なお、これらの活動によっても「不審者・不審動向の把握には」至っていない(甲1の55)。
               サミット終了後もモスクに対する網羅的・継続的な監視は継続され、同年9月のラマダーン(イスラム教における断食期間のこと)のモスク礼拝者及びイード・アル・フィトル(断食明けの祭のこと)への参加者を、東京都内の各モスク単位で数えあげていた(甲1の51。なお、甲1の51には、各参加人数について昨年比が記載されており、イード・アル・フィトルにおけるモスクへの監視が毎年実施されていることがわかる)。
               モスクは、イスラム教徒の中心的な宗教施設である。ムスリムは毎週金曜日にモスクに集まり、メッカに向けた礼拝を行う。モスクとは、ムスリム個々人が神に祈りを捧げる神聖な場であり、宗教教育の場であり、社会関係が醸成される場であり、精神的清浄さが求められる空間である。宗教施設としての公共性は有しているものの、誰もが出入りを許されているわけではない。捜査機関がモスクを定期的に監視し、個人の出入りを網羅的に把握することは、個々人のプライバシー侵害であることはもちろんのこと、イスラム教を信仰すること自体に対する圧迫といえる。
               監視対象とされたモスクについては、犯罪者の出入りが現認されたことも、犯罪者が出入りする蓋然性が認められたことも、ましてや犯罪者が出入りする具体的な危険性が認められたこともなかった。ただイスラム教徒が礼拝する施設であることのみを理由として、機械的・網羅的・横断的に、都内の主要なモスク全て、及び愛知県の主要なモスク2施設が捜査対象とされ、組織的・継続的に、大規模な情報収集活動がなされていた。
                 
              (3)イスラムコミュニティの監視及び情報収集 
               警視庁及び警察庁は、前述のモスクへの監視に加えて、イスラム関係団体、イスラム関係NGO・NPO、イスラム関係食料品店、イスラム関係飲食店、イスラム関係企業等の、あらゆるイスラムコミュニティを監視下に置き、大規模に各団体の情報を収集していた(甲1の49等)。前述のモスクへの監視が出入りする個々人の情報を収集する目的でなされていたのと異なり、当該情報収集は、各イスラムコミュニティの団体自体の情報を収集する目的でなされたものであった。
               とりわけ大規模に、網羅的・機械的な情報がなされたものとしては、.皀好(上述(2)参照、甲1の60【調査表別表(1)】)、▲ぅ好薀犂愀乎賃痢聞達韻裡僑亜敖敢塞淑棉宗複押法同(3)】)、ハラールフードと呼ばれるイスラム教の戒律上許された食料のみを扱うイスラム関係食料品店等(甲1の60【調査表別表(4)】)及びぅぅ好薀犇掬未代表を務める中古車会社・貿易会社等(甲1の60【調査表別表(7)】)があげられる。
              各コミュニティに対する情報収集項目は、以下のとおりであった。
               モスクについては、都内にある合計16箇所について、所在地、出入の状     況、出入車両及び車両使用者の人定把握、管理者、常駐者、指導者、有力者、結集人員に加え、銀行口座開設状況や物件登記の状況まで事細かに情報を収集されている(甲1の68)。
               イスラム関係団体については、イスラム教と関係の深い合計12団体について、所在地、代表者、役員、会費の額や財務状況(銀行口座、口座名義人、口座残高、収支状況)に関する情報を収集されている(甲1の69)。また、イスラムの周辺支援組織として合計39団体について、名称、所在地、設立目的、財務事情、さらにはセクト性についての情報を収集されている(甲1の70)。これらの団体の中には、医療機関である日本医療救援機構や国境なき医師団、国際機関であるユネスコ・アジア文化センター、さらには準政府機関であるJICA(国際協力機構)などが含まれている。
               イスラム関係食料品店等については、都内330超の食料品店、インド料理店、パキスタン料理店、トルコ料理店、イラン料理店等について、その名称、所在地、取扱物品、利用者の概要等の情報が収集されている(甲1の71)。
               中古車会社・貿易会社等については、都内262店の店名、所在地、代表者、輸出先、財政状況等の情報が収集されている(甲1の73)。
               上記のとおり、収集された情報が、在日イスラム教徒に関するあらゆる情報にわたっていることから、かかるイスラム関係団体の情報収集が犯罪事実の存在を契機とするものではないことは明らかである。それどころか、これらの団体については、犯罪の抽象的可能性や犯罪との親和性すら認められない。警視庁及び警察庁は、ただ、イスラム教と何らかの関係があれば、機械的・一般的・網羅的な情報を、継続的・組織的に収集していたのである。

              (4)レンタカー会社・ホテル・金融機関・大学等からの個人・団体情報の収集
               警視庁及び警察庁は、 崚堝發頬楴劼鮹屬レンタカー業者大手4社(トヨタレンタリース、ニッポンレンタカー、オリックスルレンタカー(引用ママ)、ニッサンレンタカー)から、照会文書なしで利用者情報の提供」を受ける関係を築き上げ(甲1の4)、その情報を提出させ、▲曠謄襪法岾姐饋洋昂瑤亮未靴諒欖鼻廚鯏按譴気察聞達韻裡粥法↓E豕三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)からイラン大使館に勤務する職員の給与振込履歴を取得し(甲1の85)、づ豕農工大学及び電気通信大学の管理者から留学生名簿を入手し、イスラム諸国人留学生の個人情報を把握して、イスラム教徒及びイスラム関係団体の各情報を収集していた(甲1の10)。
               これらの情報収集は、犯罪の具体的な危険はおろか、抽象的な危険や犯罪との親和性すら認められない状況下において、イスラム教徒と何らかの関係があれば、機械的・一般的・網羅的な情報を、継続的・組織的に収集するものである。

              2 本件情報収集活動は原告らの人権を侵害する
              (1)信教の自由の侵害
               ア 信教の自由の保障
               「信教の自由は、何人に対してもこれを保障」される(憲法第20条第1項)。国籍にかかわらずあらゆる人間は、個人の私事である宗教信仰に関して、国家から圧迫・干渉を受けない自由を有する。圧迫・干渉は、直接的・物理的なものにとどまらず、間接的・制度的なものも含まれる。
               信教の自由は、信仰の自由、宗教的行為・活動の自由、宗教的結社の自由という3つの側面で保障される。
               第1の信仰の自由は、保障の根幹たる宗教信仰の自由であり、内心にとどまる限り絶対的に保障されなければならない。信仰の自由には、信仰の告白を強制されず、または推知されない自由を含み(沈黙の自由)、信仰について圧迫・干渉を受けない自由が含まれる。原告らは、イスラム教徒として、イスラム教を信仰することについて行政機関から圧迫・干渉を受けない自由を有する。
               第2の宗教的行為・活動の自由は、各人が宗教上の祈り、礼拝、儀式等を主体的に行う自由である。原告らは、イスラム教徒として、イスラム教の信仰上の祈り、モスクへの礼拝、儀式への参加等について、行政機関から圧迫・干渉を受けない自由を有する。
               第3の宗教的結社の自由は、各人が宗教的な団体・組織を結成し、また所属・脱退する自由である。原告らは、イスラム教徒として、イスラム教の礼拝施設であるモスクを中心とする宗教的な結合体を結成し、当該結合体に所属することについて、行政機関から圧迫・干渉を受けない自由を有する。

               イ 本件情報収集活動が原告らの信教の自由を制約すること
               警視庁及び警察庁の本件情報収集活動は、犯罪の発生も、その蓋然性も、具体的危険も、さらには抽象的危険すらない中で、イスラム教徒又はイスラム関係団体であることのみを理由として、機械的・網羅的な情報を、継続的・組織的に収集するものである。
               本件情報収集活動によって、イスラム教は、捜査機関から一律に情報を収集されるような社会的に許容されない宗教であるとのラベルを貼られ、コミュニティの中の異物であると評価されかねない。
               捜査機関が、イスラム教徒であれば機械的にその個人情報を網羅的に収集し、継続的に礼拝施設を監視し、組織的に同個人情報を保管・利用し続け、さらには関係する全てのコミュニティを徹底的に調査するとすれば、当該宗教を信仰する者には多大な不利益がもたらされることになる。
               よって、警視庁及び警察庁による上記情報収集活動が、原告らの信教の自由に対する制約となることは明らかである。

               ウ 原告らの信教の自由の制約が許されないものであること
               本件情報収集活動は、たとえ公共の安全の保持といった捜査目的に基づくものであるとしても、憲法上許容されるものではない。
               まず、本件情報収集活動には一切の必要性がない。本件情報収集活動はテロ対策の名目で実施されたものであるが、そもそも容疑とされる「テロ」が何を意味するかが明らかではない。しかも、警視庁及び警察庁は、一般のイスラム教徒の情報ばかりを収集しており、「テロ」活動の防止のために必要な情報収集とはいえない。イスラム教徒であることのみを理由として「テロ」予備軍とみなしていることには何らの合理性もなく、これは宗教弾圧に等しいものである。
               また、仮に、一応の必要性を前提としたとしても、本件情報収集活動は、全く効果を挙げていない。例えば、愛知県の主要なモスク二か所を長期間にわたって継続的に監視しながら、何らの不審者・不審活動を認めることはできていなかったのである(甲1の55)。
               他方、本件情報収集活動により生じる人権侵害は甚大である。上記のとおり、本件情報収集活動は、特定の宗教に属する人間を全て犯罪者予備軍とみなすものであって、国家のなしうる信教の自由に対する侵害の中でも最悪な態様に属するものである。

               エ 小括
               以上のとおり、警視庁及び警察庁による本件情報収集活動は原告らの信教の自由を侵害する。

              (2)みだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由の侵害
                ア みだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由の保障
               「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」(憲法第13条)とされているところ、これは、「国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているもの」とされる(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1631頁)。
               信仰内容・信仰活動は、神との対話を通じて精神の平穏を求めるものであり、その性質上究極の私事であるから、憲法上最も保護されるべき私生活上の自由である。自分がどのような宗教を、どの程度信仰し、どのような信仰活動を行っているかといった情報は、個人にとって最も国家に立ち入られたくない領域である。
               国家が、個人の信仰内容・信仰活動に関する情報をみだりに取得してはならないことは、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関個人情報保護法」という)の制定の際に、特に注意すべき事項として、以下のように衆参両議院の附帯決議に付記されたことからも明らかである。

               「思想、信条、宗教、病気及び健康状態、犯罪の容疑、判決及び刑の執行並びに社会的差別の原因となる社会的身分に関する個人情報の取得又は保有に当たっては、利用目的を厳密に特定するとともに、可能な限り法律その他の法令等によって取得根拠を明確にし、その利用、提供及び安全確保に特段の配慮を加えること」

               以上のとおり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を有する。
              このうち内心にとどまる情報については絶対無制約であるから、行政機関が情報収集することは許されない。
               また、行動を伴う情報については絶対無制約ではないとしても、当該自由は容易に侵されてはならない究極の私事性を本質とするものである。国家は、真にやむを得ない事由がある場合に、必要最小限度において、個人の信仰内容・信仰活動に関する情報を収集することができるにとどまる。

               イ 本件情報収集活動が原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を制約すること
               警視庁及び警察庁の本件情報収集活動は、犯罪の発生も、その蓋然性も、具体的危険も、さらには抽象的危険すらない中で実施された。しかも、原告らの信仰内容・信仰活動に関する情報を、機械的・一般的・網羅的・継続的・組織的に収集することを目的としてなされたものであった。
               このような警視庁及び警察庁による捜査活動が、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を制約するものであることは明らかである。

               ウ 警視庁及び警察庁による本件情報収集活動は、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を侵害する許されないものであること
               本件情報収集活動は、たとえ公共の安全の保持といった捜査目的に基づくものであるとしても許容されるものではない。
               まず、本件情報収集活動には必要性が一切ない。公共の安全の保持のために、原告らの信仰内容・信仰活動に関する情報を、機械的・一般的・網羅的・継続的・組織的に収集する必要性は皆無である。
               また、本件情報収集活動は、公共の安全の保持に一切役立たない。原告らの信仰内容・信仰活動に関する情報を収集することにより、公共の安全が保持されることは全く実証されていない。
               他方、本件情報収集活動による人権侵害は甚大である。上記のとおり、本件情報収集活動により、原告らがどのような宗教を、どのように信じ、どれほど宗教活動を行い、どのように精神の平穏を得ているかの情報について、行政機関が把握するに至った。
              そもそも個人の情報をみだりに収集することは、法律上禁止されているところである(行政機関個人情報保護法第3条第1項、第2項参照。また、東京都個人情報の保護に関する条例(以下「東京都個人情報保護条例」という)第4条第1項:「実施機関は、個人情報を収集するときは、個人情報を取り扱う事務の目的を明確にし、当該事務の目的を達成するために必要な範囲内で、適法かつ公正な手段により収集しなければならない」参照)。
               とりわけ信仰内容・信仰活動といった極めて私事性の高い情報を収集することは、国家による私生活の蹂躙であり、極めて謙抑的でなければならない。このことは、前記衆参附帯決議及び東京都個人情報保護条例第4条第2項の規定(「実施機関は、思想、信教及び信条に関する個人情報並びに社会的差別の原因となる個人情報については、収集してはならない。ただし、法令又は条例(以下「法令等」という。)に定めがある場合及び個人情報を取り扱う事務の目的を達成するために当該個人情報が必要かつ欠くことができない場合は、この限りでない」)からも明らかである。
               以上より、本件情報収集活動は、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を侵害するものであり許されない。

               エ 小括
               以上のとおり、警視庁及び警察庁による本件情報収集活動は、原告らの個人情報を収集する真にやむを得ない事由もなく、またその態様も到底必要最小限度にとどまるとはいえないから、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を侵害する。

              (3)違法捜査を利用した情報収集活動―いわゆる「事件化」について
               警視庁及び警察庁の本件情報収集活動が、人権を侵害する強度の違法性を有する活動であることは上記のとおりである。更に、警視庁及び警察庁は、本件情報収集活動に際して、各捜査員に対して、「事件化」と称して、別件逮捕・捜索による情報収集を推奨していることが明らかになった。
               例えば、2006.8付「08年サミットに向けた国テロ対策の具体的推進要領」においては、「容疑性が濃い」と認めた場合には、組織的に「積極的に事件化」するよう、各捜査員に対して指示をしている(甲1の7)。
              当該捜査方針に基づき、実際に、2006年11月18日付で、携帯電話やパソコンのハードディスクを解析し活動内容を把握する目的で、別の無関係の人物の「入管法違反幇助」の被疑事実で逮捕し、捜索・差押を行ったことが記載されている(甲1の31・2p以下)。また、より重要であると目星をつけた人物に対しては、ある人物に携帯電話を買い与えたという被疑事実のみで、不法残留幇助として逮捕・勾留し、自宅・勤務先を捜索し、パソコン等を押収し、内容を解析する等の徹底した事情聴取を行ったことが記録されている(甲1の19・1p以下)。
               上記記載内容からすれば、「事件化」捜査が、憲法及び刑事訴訟法で禁止された典型的な別件逮捕であることは明らかである。警視庁及び警察庁が、このような別件逮捕を日常的に駆使して情報収集を実施している事実は、本件情報収集活動が人権を侵害するものであることを端的に表すものである。

              3 小括
               以上より、警視庁及び警察庁は、組織として本件情報収集活動を実施して原告らの人権を侵害したのであるから、被告らは国家賠償法第1条第1項に基づき原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。
                 
              第3 保管態様の違法性について
              1 警視庁及び警察庁の個人情報の保管態様
               警視庁及び警察庁は、以下の態様で原告らの信仰内容・信仰活動に関する個人情報を保管している(以下「本件保管態様」という)。
                )楫鐓霾鷦集活動により収集した原告らイスラム教徒の大量の個人情報を、履歴書のような態様で保管している(甲1の11の1〜20、1の12)。
               ◆.汽潺奪箸砲けるテロ対策名目で収集した大量の個人情報を、サミット終了後においても、「各署から報告を受けて統計化を図」っている(甲1の55・)。

              2 原告らの自身の信仰内容・信仰活動に関する個人情報をみだりに行政機関に保管されない自由の侵害
              (1)みだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由の保障
               上述のとおり、国民の私生活上の自由は、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべきであるところ(憲法第13条)、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由を有する。
               行政機関は、一定の目的があって初めて個人情報を収集する権限を与えられるのであるから(行政機関個人情報保護法第3条「行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない」参照)、当該目的が消滅すれば当然に収集した個人情報を廃棄しなければならないことの当然である。
               このことは、東京都が自ら制定した東京都個人情報保護条例において、「実施機関は、保有の必要がなくなった保有個人情報については、速やかに消去し、又はこれを記録した公文書を廃棄しなければならない。ただし、歴史的資料として保有されるものについては、この限りでない。」(同条例第7条第3項)として、明文化されている。
               当該自由が絶対無制約ではないにしても、当該自由が究極の私事性を本質とするものであること、捜査機関が抽象的な捜査の必要性をもって容易に当該自由を制約できるとすれば憲法が当該自由を保障した趣旨が骨抜きになってしまうことに鑑みれば、行政機関による制約が許容される事例は、極めて限定的な場合でなければならない。
               そこで、行政機関は、真にやむを得ない事由がある場合に、必要最小限度、個人の信仰内容・信仰活動に関する情報を保管することができるにとどまる。保管する必要性、目的等を踏まえた、保管における比例原則を遵守しなければならない。

              (2)本件保管態様が原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由を制約すること
               警視庁及び警察庁の本件保管態様は、犯罪の発生も、その蓋然性も、具体的危険も、さらには抽象的危険すらない中で、イスラム教徒又はイスラム関係団体の関係者であることのみを理由として、原告らの信仰内容・信仰活動に関する情報を、一覧性を伴う方式で保管するものである。
               よって、警視庁及び警察庁による本件保管態様が、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由に対する制約となることは明らかである。

              (3)警視庁及び警察庁による原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由の制約は許されないものであること
               本件保管態様は、たとえ公共の安全の保持といった目的に基づくものであるとしても、憲法上許容されるものではない。
               まず、原告らの情報の保管には一切の必要性がない。公共の安全の保持のために、原告らの信仰内容・信仰活動に関する情報を保管する必要性は皆無である。
              また、原告らの情報を保管することにより公共の安全が確保されるという関係にもない。原告らの信仰内容・信仰活動に関する情報を保管することにより、公共の安全が保持されることは全く実証されていない。
               本件保管態様は、単なる見込み捜査に基づいて大量に収集した個人情報を、イスラム教徒というラベリングの元に一覧性の高い態様で保管するものにすぎない。上記のとおりこれらの情報は、収集されることすら極めて限定的であるべきであるが、仮に適法に収集した場合でも取扱いは厳重にされなければならない。大量の個々人の信仰内容・信仰活動に関する情報が、無目的に行政機関により保管され、データベース化されてしまえば、行政機関はいつでも個人の信仰内容・信仰活動を把握することが出来てしまう。また、収集された個人情報が全く廃棄されないとすれば、行政機関には大量の信仰内容・信仰活動に関する個人情報が蓄積され、いつでも、いつまでも行政機関が利用することが可能になってしまう。
               しかも、本件保管態様は、原告らの一切の承諾のないままに行われており、かつ、原告らには一切の利便がもたらされない点で免許等の場合とは異なる。原告らは、犯罪はおろか、そのような個人情報の保管を甘受すべき何らの違法行為も行っていない。
              よって、本件保管態様は、保管につき真にやむを得ない事由もなく、また、その人権制約の程度は必要最小限度にとどまるとは到底いえないから、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由を侵害するものであり許されない。

              3 小括
               以上より、警視庁及び警察庁は、組織として原告らの個人情報を保管して原告らの人権を侵害したのであるから、国家賠償法第1条第1項に基づき原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。

              第4 漏洩行為の違法性について
              1 警視庁の不法行為
              (1)職員による故意の流出の場合  
               当該漏洩行為が故意に基づくものであれば、当該漏洩させた職員が「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」とする地方公務員法第34条第1項に違反したことは明らかである。
               そして、当該漏洩させた職員は警視庁の職員であるから、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員」であり、また、当該漏洩行為は「その職務を行うについて」なされたものであるから、警視庁の上級機関である被告都は、原告らに生じた損害を賠償しなければならない。

              (2)過失による流出の場合
               警視庁の長である警視総監は、以下のとおり、保有する個人情報を適切に管理し、漏洩を防止するために適切な措置を講じる義務を負っていた。
              すなわち、行政機関個人情報保護法第6条第1項は、「行政機関の長は、保有個人情報の漏洩、滅失又はき損の防止その他の保有個人情報の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。」と定めている。
               また、警視庁の上級機関である被告都は、東京都個人情報保護条例を制定しており、警視庁の長である警視総監は同条例の実施機関とされる(同条例第2条第1項)。警視総監は、同条例に基づき、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができる」個人情報(同条第2項)に関して、「みだりに公にされることのないよう最大限の配慮」をし(同条例第3条第1項)、また、適正な取扱が確保されるよう必要な措置を講ずる義務を負う(同条第3項)。上記義務の具体化として、警視総監は、「保有個人情報の漏洩、滅失及びき損の防止その他の保有個人情報の適正な管理のために必要な措置を講じなければならない」(同条例第7条第2項。警視総監が負う上記義務を、以下「漏洩対策構築義務」という)。
               しかるに、警視庁が、平成22年12月24日付「国際テロ関連データのインターネット上への掲出事案について」(甲3)において、「外事第三課内で使用されているコンピュータの中には、外部記録媒体の使用履歴の証跡管理その他の管理が不十分と思われるものが一部存在することが判明するなど、外部記録媒体を用いた情報の持ち出しが可能であったことは否定できない」と認めるとおり(甲3・4p)、警視総監は漏洩対策構築義務を怠り、本件個人情報を漏洩させるに至った。

              2 本件漏洩対策構築義務違反により、原告らには重大な権利侵害が生じた
               まず、本件漏洩対策構築義務違反により、原告らの大量の個人情報を流出させ、不特定多数の人間に伝達するに至ったのであるから、原告らのプライバシー権を侵害したことは明らかである。
               また、本件流出は、単に個人情報の流出にとどまらず、当該個人がムスリムであるというセンシティブ情報の流出でもあったから、原告らの、みだりに信仰内容・信仰活動を他者に知られない自由を侵害したこともまた明らかである。
              さらに、本件流出資料は、警視庁及び警察庁によるテロ対策捜査資料であることが一見して明らかであり、掲載された個人が捜査機関によりテロリスト又はテロリスト関係者とみなされているという印象を強く与えるものであった。しかし、原告らはテロリストでもテロリスト関係者でもない一般の市民であるから、本件流出が原告らの社会的評価を著しく低下させ、原告らの名誉権を侵害したこともまた明らかである。
                
              3 被告都の不法行為責任
               警視総監の上記漏洩対策構築義務違反が、「職務を行うについて」なされたものであることは明らかであり、また、当該義務違反により本件漏洩が生じ、原告らに損害が生じたことは明らかである。
               よって、被告都は、警視総監の上級機関として、警視総監の上記不法行為によって原告らに生じた損害を賠償する責めを負う。

              第5 放置行為の違法性について
              1 警視庁及び警察庁は捜査資料の流出を認識していたこと
               本件個人情報は、2010年10月28日にインターネット上に流出し、同月29日夜の段階では既に警視庁により警視庁の捜査資料である旨の確認がなされていたと報道されている。
               実際、本件流出資料は、その内容の詳細度、具体性、分量、捜査機関でなければ知りえないような情報が掲載されていること等の特徴から、一見して警視庁及び警察庁の捜査資料であることは明らかであり、警視庁が同月29日夜の段階で捜査資料であることを確認したとの報道の信用性は極めて高い。

              2 警視庁及び警察庁が何らの実効的対策を採らなかったこと
               警視庁及び警察庁は、同年12月24日に漏洩の事実を認めて形式上の謝罪をするまで、本件流出資料について自らが作成・管理していた文書であることを認めず、何ら実効的対策を採らなかった(以下「本件不作為」という)。

              3 警視総監及び警察庁長官には損害拡大防止義務が課せられていたこと
              (1)警視総監について
               東京都個人情報保護条例において「実施機関は、この条例の目的を達成するため、個人情報の保護に関し必要な措置を講ずるとともに、個人情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」(同条例第3条第1項)と定められているところ、ひとたび漏洩した個人情報をそのまま放置すれば、「個人情報がみだりに公にされる」状態が続くのであるから、「実施機関」である警視総監には、公にされた状態を可及的速やかに除去すべく「最大限の配慮を」する義務が課せられていた。
               警視庁には本件捜査資料の漏洩に関する不法行為責任が認められること(第4参照)、警視庁が情報の流出を認め被害の拡大防止措置を採ることは容易であったこと、本件捜査資料には原告らのセンシティブ情報が含まれており、また、本件捜査資料がテロリスト対策名目でなされたものであるから原告らがテロリストであると誤解される恐れがあり、原告らが甚大な損害を蒙る蓋然性が高かったこと等を総合すれば、当該義務は、本件事案の下では、自己の違法な先行行為によってもたらされる原告らの損害を拡大させないよう防止する義務(以下「損害拡大防止義務」という)という作為義務となって、実施機関たる警視総監に課せられていたと解するべきである(警察官には具体的事案のもとで国民の権利を保護するために一定の作為義務が課せられることを判示した最判昭和57年1月19日民集36巻1号23頁参照)。

              (2)警察庁長官について
               行政機関個人情報保護法において、「行政機関の長は、保有個人情報の漏洩、滅失又はき損の防止その他の保有個人情報の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。」(同法第6条第1項)と定められているところ、漏洩した個人情報に関しても、漏洩以前に行政機関が保有・管理していた個人情報である以上、「適切な管理のために必要な措置」が講じられなければならない。したがって、警察庁の長である警察庁長官には、漏洩した原告らの個人情報を保護するための「必要な措置」を講じる義務が課せられていた。
               当該義務が、警察庁長官に対して、損害拡大防止義務として具体化されて課せられていたことは、上記警視総監の場合と同様である。

              4 被告らの不法行為責任
               警視総監及び警察庁長官の本件不作為が、警視総監及び警察庁長官に課せられた損害拡大防止義務に反することは明らかである。警視総監及び警察庁長官は、流出資料について警視庁及び警察庁が作成・管理していた文書であることを速やかに認めた上で、資料の公開・掲出を続けるインターネットプロバイダー等に対して、実効的に削除請求等の具体的な対応をするべきであった。
               よって、被告都は、国家賠償法上、本件不作為によって原告らに生じた損害について、賠償する責任を負う。


              国家賠償請求:訴状(1/3)

              0
                ※以下、訴状の抄出を掲載します。

                訴    状

                2011年5月16日
                東京地方裁判所民事部 御中
                             
                                  原告ら訴訟代理人弁護士  梓  澤  和  幸

                                  同            上  柳  敏  郎

                                  同            西  岡  弘  之

                                  同            難  波     満

                                  同            岩  井     信

                                  同            山  本  志  都

                                  同            癲 ゞ供  ̄Α ゝ

                                  同            河    健 一 郎

                                  同            福  田  健  治

                                  同            小  松  圭  介

                                  同            井  桁  大  介

                             
                当事者の表示    別紙当事者目録記載のとおり
                事件の表示      公安テロ情報流出被害国家賠償請求事件

                訴訟物の価額    金1億5400万円
                貼用印紙額      訴訟救助申し立て

                 
                目 次
                (略)

                請求の趣旨

                1 被告らは、連帯して、各原告らに対し、それぞれ金1100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
                2 訴訟費用は被告らの負担とする。
                との判決並びに仮執行の宣言を求める。

                請求の原因

                第1 本件流出事件の経緯と被告らの責任
                1 事案の概要
                 本訴訟は、警視庁、警察庁及び国家公安委員会(以下「本件実施機関」という)が、人権を侵害する態様で原告らの個人情報を収集し、収集した個人情報を正当な理由無く保管し、かかる個人情報を漏洩させ、さらに、漏洩後に適切な損害拡大防止措置を執らなかったこと(以下、総称して「本件各不法行為」という)によって、原告らに生じさせた損害の賠償を、本件実施機関の責任主体である被告らに求める訴訟である。

                2 本件流出事件の経緯
                 いわゆる公安テロ情報流出事件(以下「本件流出事件」という)の経緯は以下のとおりである。

                (1)2010(平成22)年10月28日ころ、警視庁公安部外事第三課(以下「外事第三課」という)の捜査資料114点(甲1。以下、流出した上記114点を総称して「本件流出資料」という)が、ファイル交換ソフトのWinnyを通じてインターネット上に流出した(甲2、3)。流出した捜査資料は、20を超える国と地域の1万台以上のパソコンにダウンロードされた(同年11月25日現在。甲5)。

                (2)本件流出資料には、原告らを含む一般私人の、国籍、出生地、氏名、生年月日、顔写真、住所、勤務先、使用車両、容疑、対応状況及び方針、家族・交友関係(関係、氏名、生年月日、勤務先、住所)、上陸年月日、旅券番号、旅券発行年月日、在留資格、本国住所、在留期間、外国人登録年月日、登録市町村、登録番号、住所歴、学歴・職歴、免許関係、犯罪情報、所属団体、モスクへの立ち入り状況、立ち寄り徘徊先、行動パターン概要、身体特徴等の詳細なプライバシー情報が含まれていた(甲1の11の1〜20、1の12。以下、本件流出事件により流出した原告らの個人情報を総称して「本件個人情報」という)。流出したプライバシー情報の大半は国内外のイスラム教徒についての情報である。対象者の国籍は様々であり、イスラム教徒であること以上の共通項が無く、本件流出資料がイスラム教徒を対象とした大規模捜査に基づく資料であることは明らかであった。
                (3)また、本件流出資料には、外事第三課及び警察庁の内部資料が含まれていた。同資料によれば、当該捜査は、テロ対策の名目の下、日本国内のイスラム教徒の個人情報を網羅的・機械的に収集することを目的とするものであった。

                (4)同年10月29日ころ、警視庁及び警察庁は、本件流出事件を認知した(甲2、3)。しかし、両庁とも、本件流出資料が警視庁及び警察庁の内部資料であることを認めず、事態を放置したため、次々と同資料が閲覧・ダウンロードされ、原告らの被害は飛躍的増加の一途をたどった(甲4〜6参照)。

                (5)同年12月9日、原告らの一部は、東京地方検察庁に対し、本件流出事件について地方公務員法違反の被疑事実で告訴状を提出するとともに、国家公安委員会に対し、謝罪と被害者保護等の対応を申し入れた。同日、国家公安委員会は、被害者保護等を警察庁に指示し、これを受け警察庁は全都道府県警察本部に対し必要な措置を指示し、警視庁も、被害者保護の徹底等を指示する副総監通達を発出した(甲2、3)。翌10日、同告訴状は正式に受理された。なお、上記原告らの一部の代理人弁護士は、前記申入れに先立ち、同年12月8日、国家公安委員会に事前連絡をしていた。

                (6)同年12月24日、警視庁及び警察庁は、「本件データには、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていると認められた」として、警視庁及び警察庁の捜査資料が流出した事実を認めるに至った(甲2、3)。

                3 警視庁・警察庁が一体となって行った不法行為
                 本件流出事件により以下の事実が明らかになった。
                 第1に、警察庁の指揮の下、警視庁を中心とする日本の捜査機関が、イスラム教に対する偏見・誤解に基づく思い込みと事実に基づかない憶測から、イスラム教徒であることのみを理由として、日本に在住するイスラム教徒を、横断的・網羅的・組織的・機械的・体系的に監視し、その個人情報を収集していた。
                 第2に、警視庁及び警察庁が取得した大量のイスラム教徒の個人情報を、犯罪との関連性を検討することなくリスト化し、保管・管理していた。
                 第3に、収集した個人情報を、後述のとおり、いわゆるセンシティブ情報が数多く含まれるものであるにもかかわらず、容易にインターネットに流出してしまうような脆弱な情報管理態勢に基づき管理していた。
                 第4に、一見して捜査資料と分かる情報が大量に流出した事実を認識しながら、2ヶ月近くも本件流出資料が警視庁及び警察庁が作成・管理していた文書であることを認めず、実効的措置をとることなく漫然放置して損害を拡大させた。

                 上記の警視庁及び警察庁の各行為は、以下の4つの不法行為を構成する。
                  〃抻訥5擇啖抻…は、イスラム教徒であることのみを理由として、横断的・網羅的・組織的・機械的・体系的に、原告らイスラム教徒の本件個人情報を収集し、もって、原告らの信教の自由及びみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に収集されない自由を侵害した。
                 ◆〃抻訥5擇啖抻…は、捜査活動により収集した原告らの個人情報を正当な理由なく保管し、もって、原告らのみだりに自身の信仰内容・信仰活動に関する情報を行政機関に保管されない自由を侵害した。
                  警視庁及び警察庁は、本件個人情報を故意又は過失に基づきインターネット上に流出させ、もって、原告らのプライバシーの自由、みだりに自身の信仰内容・信仰活動を他者に知られない自由及び名誉権を侵害した。
                 ぁ〃抻訥5擇啖抻…は、本件個人情報がインターネットに流出した事実を早期に認識したにもかかわらず、何ら実効的な損害拡大防止措置も執らず漫然とこれを放置し、もって、原告らに生じた損害を拡大させた。
                 以上のとおり、警視庁及び警察庁は、,覆い鍬い遼楫鏗読塰々坩戮鮃圓辰燭發里任△襦 

                4 被告らの責任
                (1)被告都の責任
                 被告都は、国家賠償法上、警視庁の行った本件各不法行為の責任を負う。
                (2)被告国の責任
                 被告国は、国家賠償法上、警察庁の行った本件各不法行為の責任を負う。
                また、国家公安委員会は、上記,覆い鍬い遼楫鏗読塰々坩戮砲弔監督・是正する義務を負っていたにもかかわらず、これらの義務を怠ったことにより、警視庁及び警察庁との間で共同不法行為をなしたところ、被告国は、国家賠償法上、国家公安委員会による同不法行為の責任を負う。

                5 原告らの損害
                 原告らは、本件各不法行為によって甚大な侵害を受けた。
                 原告らは、その宗教的活動や交際歴など通常一般人が秘匿を強く望むセンシティブ情報を組織的に収集、保管、継続利用された。また、「国際テロ」の容疑者であるかのようなあらぬ疑いをかけられ、それと密接不可分の形で個人情報が不特定多数に伝播する状態下に流出させられた。
                 これにより、原告らは、そのプライバシーが侵害され、社会的評価が低下し、さらには、原告らの生命・身体に対する安全が脅かされるに至った。原告らは、毎日不安を覚えながらの生活を余儀なくさせられている。一度流出した情報を回収することは不可能である。原告らは、現実に職場から解雇され、経営する飲食店の売上が激減する、家族の身の安全を守るべく家族と別居を余儀なくされる、母国へ帰ることが出来なくなる等の多岐に渡る取り返しのつかない損害を受けた。
                 原告らが有形、無形に受けた損害を金銭的に評価すれば、それぞれ金1000万円を下ることはない。また、弁護士費用としては、それぞれ上記損害の1割の金100万円が相当である。

                6 小括
                 よって、原告らは、被告らに対して国家賠償法第1条第1項に基づき、生じた損害の賠償として、それぞれ金1100万円の慰謝料を請求する。
                 以下、本件各不法行為の態様につき詳論する。

                第一次仮処分決定に対する異議審の決定要旨

                0
                   決定要旨

                  主文の要旨

                   債権者と債務者との間の出版禁止等仮処分命令申立事件につき,東京地方裁判所が平成22年11月29日にした仮処分決定を認可する。

                  理由の要旨

                  1 当裁判所は,原決定は相当であるものと判断する。その理由は,異議審における債務者の主張を踏まえ,次項のとおり付加するほか,原決定「理由」の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから,これを引用する。

                  2 異議審における債務者の主張について
                  (1) 原決定は,本件記事中に債権者らのプライパシーに関わる情報が記載されているとした上で,本件記事の出版等は,公共の利害に関する事項に係るものとはいえず,もっぱら公益を図る目的のものではないことが明白であり,債権者らが重大にして著しく回復不可能な損害を被るおそれがあるなどとして,債権者らの申立てを認容する決定をした。

                  (2) これに対し,債務者は,イスラム教徒であるという理由だけで個人をテロリストとみなしている公安警察の違法捜査の問題について,流出した債権者らの個人情報を含む本件記事の内容をそのまま公開することにより,その問題の実態を迫真性をもって明らかにするとともに,被害者の注意を喚起することができるから,本件記事の出版等は,公共の利害に関する事項に係るものであると主張する。しかしながら,本件記事は,公的立場にない債権者らのプライパシーに関わる情報を含むものであって,このような情報それ自体が公共の利害に関する事項に当たるということはできない。そして,債務者のいう違法捜査問題に関して問題の実体を迫真性をもって明らかにすることや被害者の注意を喚起することは,債権者らのプライバシーに関わる情報を明らかにすることなく可能であって,ことさらにこのような情報をそのまま書籍中に掲載することに合理性はないから,債権者(※原文ママ)の主張は採用できない。

                  (3) 次に,債務者は,債権者らの個人情報をそのまま公開することによって,警察から個人情報が流出しているという問題及びイスラム教徒という理由だけで個人をテロリストとみなしている公安警察の違法捜査の問題に関して,国民に対して問題提起をし,あるいは,国民や被害者の注意を喚起することができるから,公益を図る目的があるなどと主張する。しかしながら,上記目的達成のために債権者らの個人情報をそのまま公開する必要性は全くなく,その公開には何らの合理性も見出し得ないのであって,本件記事の出版等が公益を図る目的ではないことは明白であるといえる。

                  (4) また,債務者は,本件記事中の債権者らの情報は,既にインターネット上に流出,拡散しているから,本件記事の出版等により,債権者らが重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるとはいえないなどと主張する。しかしながら,本件記事の出版等により,債権者らの個人情報がより広範囲に公開されるおそれは高い。また,一般に匿名性の高いインターネット上の情報に比して,書籍に対する信用性が高いことに鑑みると,本件記事の出版等により,債権者らがより重大な損害を受けるおそれがあるといえる。そして,本件記事中に記載された債権者らの個人情報が,債権者らの氏名,住所,生年月日などの個人を特定することのできる情報のほか,債権者らの宗教的活動や交際歴などの通常一般人が秘匿を強く望む情報であること,本件記事が,債権者らに対するテロ捜査情報の公開という体裁を取っていることから,本件記事の出版等により,債権者らは,その社会生活に大きな支障を来すおそれがあることなどに鑑みると,既にインターネット上に本件記事と同内容の情報が流出,拡散しているとしても,本件記事の出版等によって債権者らは,重大にして著しく回復困難な損害を被るといえる。

                  (5) 以上のとおり,異議審における債務者の主張は,総じて債権者らのプライパシーに対する配慮を欠いた独善的な主張というべきであり,いずれも採用することができない。

                  以 上



                  2010年12月25日付アルジャジーラインタビュー

                  0
                     アラビア語放送

                    番組開始

                    被害者1(中東系ムスリム)が情報流出被害にあったことについてのまとめビデオ。

                    被害者2(日本人ムスリム)への電話インタビュー
                     Q. 日本人か? Yes
                     Q. 入信はいつころか? 略
                     Q. 情報流出の事態を受けてどういう対応を取ったか?
                        最初は何もできなかったが、出版を受けて弁護士に相談し差止めを行った。
                        その過程で他の被害者と連絡を取り合い、一緒に対応するようになった。
                        ようやく責任者の一応の謝罪にこぎつけたところ。

                    カイロの人権活動家への質問
                     Q. 事態をどう見るか? 日本も締約している人権条約違反で大きな問題。

                    上柳弁護士への質問
                     Q. 情報流出は日本法上問題とならないのか? 国際法上も国内法上も問題。
                     Q. 法的手段としては何ができるのか? 国家賠償請求訴訟等が考えられる。
                     Q. 政府は情報流出を認めているのか? 昨日、事実上認めた。
                     Q. 政府から謝罪はあったのか? 警察当局からの謝罪は昨日あったが、不十分。
                     Q. 日本にイスラム教徒はどれくらい? 外国籍3万人、日本籍1万人と言われている。
                     Q. 日本人はイスラム教徒を敵視しているのか? No。法を守る善良な人とみている。但し、イスラム教徒の文化とコミュニティに対する知識不足があり、知識を普及しなければならない。
                     Q. 既に法的手段は取っているのか? 出版社に対しては差止と損害賠償請求を行っている。政府に対しては賠償請求を準備中だ。

                    カイロの人権活動家への質問
                     Q. こんなに経済的に裕福な国がこのような人権侵害を行うことをどうみるか?
                        人権条約に反しており違法。
                     Q. アラブ諸国の人権団体はこの事件を知っているのか?アムネスティなどは?
                        略

                                                       以 上

                    ※なお、以上は伝聞である上に、通訳を何重にも通しており不正確な記載が多数あると思われます。ご理解の程宜しくお願い致します。




                     

                    2010年12月24日付国家公安委員長への申入書

                    0
                      2010年12月24日
                      国家公安委員長 岡崎トミ子 殿
                       
                      申入書―公安「テロ」情報流出につき一層の対応を求める

                              公安「テロ」情報流出被害者一同及び同被害弁護団

                      本日付の報道は、警視庁が同庁公安部外事三課からの情報流出について、重い腰を上げて事実関係の一部を認め、被害者に対して謝罪を行ったと伝えている。

                      情報流出の事実を率直に認めて謝罪することは、問題解決の大前提であり、我々もこれまで何度も強く求めてきたところである。情報流出からおよそ二カ月も経過した対応は、遅きに失したと言わざるを得ない。

                      かかる対応の遅れと無責任さによって拡大した損害を一刻も早く回復するため、政府・国家公安委員会は、警察庁及び警視庁を指揮・監督し、被害者に対し下記の適切かつ十分な救済措置を直ちになすべきである。




                      一.  身辺保護の徹底

                      二.  適切な在留資格の付与等の国際関係における庇護

                      三.  名誉毀損にあたる記載についての謝罪と訂正・削除及び名誉回復

                      四.  責任ある被害相談窓口の設置及び発生した損害についての賠償

                      五.  情報流出の実行行為者の特定及び摘発・処罰及び再発防止

                      六.  ネット上に流出した情報の削除、拡散防止措置

                      七.  イスラム教徒全体をテロ予備軍として捜査対象にする方針の撤回

                      八.  入管法違反等を口実とした別件逮捕を用いた違法・不当捜査の是正

                                                 以  上

                       


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