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国家賠償請求:訴状(3/3)

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     第6 国の責任−共同不法行為
    1 警視庁の本件情報収集活動及び本件保管態様は警察庁の指揮の下で行われた
     被告国の機関である警察庁には、「国の公安に係る事案についての警察運営・・・に関しては、内閣の治安責任を明確ならしめるため、当然」に公安事案に関する指揮・監督権限が認められる(田上穣治『警察法』286頁(有斐閣、新版初版、1994年))。本件捜査が「国の公安に係る事案についての警察運営」に関するものであることは明らかであるから、警察庁が本件捜査に関し警視庁に対する指揮・監督権限を有していたことも明らかである。
     また、本件捜査が警察庁の指揮の下で行われたことは以下の記載からも明らかである。
      (神13年9月21日付「テロ関連情報に基づく容疑者等の具体的追及要領」によれば、警視庁は、違法行為が認められないテロ容疑者及びその同行者の秘匿行動確認捜査に当たり、「警察庁へ連絡・指示を受け」、また「警察庁へ出国情報を速報」することとしていた(甲1の7)。
     ◆^γ慮の各モスクに対する監視は、「サミット直前期における本庁(引用者注:警察庁のこと)通達に基づき」行われていた。また、「警察庁からの下命案件」について個別の捜査も実施されていた(甲1の55・1p)。
      平成21年1月14日付「国際テロリズム対策課」作成に係る、「関東地域国テロ担当補佐等会議概要(1/9:警察庁)」によれば、警察庁の「国際テロリズム対策課長」によって「昨年末」に「20年通達」を発出しているところ、その内容には「OIC56カ国1地域を重点」として、「実態把握」をすることが指示され、かつ、当該実態把握の成果として、ムスリムの個人情報の収集率が明示されており、警察庁が警視庁をはじめとする各都道府県警察機関に対し、ムスリムを対象とした個人情報収集について通達を発出する等して指揮・監督していたことが認められる(甲1の5)。
    以上から、警視庁の本件捜査が、警察庁の指揮・監督の下でなされたことは明らかである。
     したがって、警察庁の上級機関である被告国は、被告都と共同不法行為責任を負う。

    2 警視庁の上記全ての違法行為(本件情報収集活動、本件保管態様、漏洩対策構築義務違反及び損害拡大防止義務違反)について、国家公安委員会には監督義務違反がある
     被告国の機関である国家公安委員会は、警察組織の監視機関として、「国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養、警察通信、情報技術の解析、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行うことにより、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持することを任務」とし、そのために各種事務について、「警察庁を管理する」義務を負う(警察法第5条第1項、第2項)。
     国家公安委員会は、上記「任務を遂行するために警察庁を管理」するとされ、警察庁に対する管理・監督権限を有する。また、「都道府県の地方警務官が国家公務員」とされることにより(警察法第56条第1項)、国家公安委員会には、国の公安に関して各都道府県警察に対する管理・監督権限を有しており、これにより国家公安委員会が警察運営の最終責任者であることが貫徹されている(前掲『警察法』282p等)。
     実際、警察刷新に関する緊急提言においても、国家公安委員会の警察事務に対する管理・監督権限について、「警察事務の執行が法令に違反・・(の)疑いが生じた場合には、その是正又は再発防止のため、具体的事態に応じ、個別的又は具体的に採るべき措置を指示することも、『管理』の本来の意味が上記のものである限り、なんら否定されないものというべきである。・・公安委員会の行う『管理』に内在するものとして、警察庁は、適宜、国家公安委員会に対して警察事務の執行につき所要の報告を行うべき職責を有し、また、国家公安委員会から報告を求められたときは、速やかにそれを行うべきものである」としている(甲8参照)
     以上からすれば、被告国の機関である国家公安委員会は、警察事務の執行において、捜査や捜査によって取得した情報の管理によって人権侵害が生じた場合には、その是正のために個別具体的な措置を執るべき義務を負うことは明らかである。
     然るに、警視庁公安部が本件各不法行為を行っていたのであるから、国家公安委員会としては、適切な是正措置を採らねばならなかった。
     それにもかかわらず国家公安委員会は漫然上記是正措置を怠り、本件人権侵害を引き起こしたのであるから、国家公安委員会に是正措置義務違反があることは明らかである。
     したがって、国家公安委員会の上級機関である被告国は、やはり被告都と共同不法行為責任を負う。

    第7 結語にかえて−本件訴訟の意義
     本件は、全国29万1475人(平成22年度の定員)の警察官を指揮統制下におく警察庁と、4万3156人(平成22年4月1日時点)の首都の警察官を指揮統制下におく警視庁による信教の自由等を侵害する公権力行使の問題を問う訴訟である。すなわち、日本とその首都の最大最強の公権力組織のあり方が問われているのである。
     侵害された基本的人権は、日本国内のムスリムの信教の自由、内面の宗教的思想・良心の自由であり、それと密接不可分のプライバシー権・名誉権である。もともとイスラム教は、仏教、キリスト教に並ぶ三大世界宗教とされ、世界中に15億人の信者を擁するが、本件訴訟で問題にしたいのは、一人ひとりの信者の内面の自由である信教の自由に公権力が干渉したことの重大な意味である。
     フランス人権宣言は、「人は自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する」(同第1条)とうたっている。世界人権宣言、国際人権規約(自由権規約)、日本国憲法も同旨の条項を擁する。
     かかる条項の核心にあるのは「個人の人格の根源的な平等性」である。自分の選択した生き方や考え方が根本的に間違っているという理由にもとづいて否定され干渉されるとき、そうした(中核にある)権利が侵害されている(長谷部恭男『憲法(新法学ライブラリ)』110頁(新世社、第5版、2011年)参照)。
     近代立憲主義のもとでは、人間は元来自律する平等な存在であり、その内面において完全に自由であり(日本国憲法第19条)、公権力はいかなる立法目的、行政目的を掲げたとしても、この内面の自由に立ち入ることは全く許されないのである。
     しかるに被告らはかかる内面に侵入し、個人の尊厳を根底から蹂躙したのである。この事実がかくも公然と明らかになった以上、被告らの行為を放置することは許されない。
    本件は、ひとりイスラム教徒だけの問題ではなく、基本的人権尊重を最高の理念とする日本国憲法下に生きる人々全て、さらにはそれを越えて世界人権宣言と国際人権規約によって結ばれている全世界の人々の関心を呼ばずにおかない訴訟である。
     本件訴訟はこの意味において重大な意義をもつことを強調しておきたい。
     以上より、原告らは、被告らに対し、連帯して、信教の自由、みだりに自身の信仰内容・信仰活動を国家に収集及び保管されない自由、プライバシーの自由並びに名誉権の侵害を伴う不法行為により生じた損害の賠償として、それぞれ金1100万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
      
    証拠方法

    甲第1号証の1〜114 本件流出資料
    甲第2号証  警察庁平成22年12月付「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案に関する中間的見解等について」
    甲第3号証  警視庁平成22年12月24日付「国際テロ関連データのインターネット上への掲出事案について」
    甲第4号証  毎日新聞2010年11月7日付記事
    甲第5号証  朝日新聞2010年11月28日付記事
    甲第6号証  朝日新聞2010年12月24日付記事
    甲第7号証  田原牧「無知の怖さ」世界2011年1月号
    甲第8号証  国家公安委員会ホームページ「警察法上の『管理』について」
           http://www.npsc.go.jp/sasshin/suggestion/03.html

    付属書類

    1 訴状副本                   2通
    2 甲号証写し                  2通
    3 訴訟委任状                 14通
                                  以 上


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