対第三書館ら判決に関する弁護団声明
2012年10月26日
東京地方裁判所民事43部(萩原秀紀裁判長、鎌野真敬裁判官、手塚隆成裁判官)は、本日、流出公安情報出版被害回復請求訴訟(被告株式会社第三書館、同社社長北川明氏)について、原告勝訴の判決を言い渡した。判決は、第三書館に対し、『流出「公安テロ情報」全データ』初版及び第2版の出版、販売、頒布の差し止めを命ずるとともに、第三書館と北川氏に対し、連帯して原告一人あたり220万円の損害賠償の支払いを命じた。
この判決は、第三書館の出版が原告らの名誉及びプライバシーを著しく侵害したことを明確に認めて断罪したものであり、大きな意義を有する。判決は、第三書館が、裁判所の第1次仮処分決定が送達された後にも初版本108冊を書店に出荷し、さらに、第2次仮処分決定が送達された後にも第2版本の発送を行ったことを認定し、原告らに対する名誉及びプライバシー侵害の態様は悪質であると判示した。
この判決は、原告らが国及び東京都を被告としている国家賠償請求訴訟にとっても、大きな意義を有する。判決は、第三書館が出版した各書籍の記載があたかも原告らがテロリスト又はその関係者であるかのように記載するものであると指摘し、相当額の慰謝料の支払いを命じた。これら書籍に記載された情報は、もともと警察が日本にいるムスリム全員を対象として収集してデータベース化し、さらに管理を怠って流出させたものである。この警察の情報収集行為は、全世界の人口の4分の1近くを占めるムスリムを敵視するものであり、日本国及び国民の名誉をも傷つけるものでもある。警察は、この情報流出から丁度2年が経つにもかかわらず、いまだに原告らに謝罪をしない。そればかりか、国家賠償請求訴訟において、国及び東京都は、情報流出の事実すら認めない不誠実な対応を続けている。国及び東京都の責任は、出版社よりもはるかに重い。
今回の勝訴判決にあたり、支援を続けてくださってきた皆様に改めて感謝いたしますとともに、引き続きのご協力ご支援をお願い申し上げます。
以 上