<< 国・都を被告とする訴訟が結審しました。判決は1月15日です。 | main | 国家賠償訴訟一審判決【英訳版】1/5 >>

国家賠償請求事件 一審判決要旨

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    以下は、本日言い渡された国家賠償請求事件の一審判決についての、裁判所作成の判決要旨です。

     【注】これは判決ではありません。

    平成26年1月15日午後3時判決 言渡 615号法廷
    平成23年(ワ)第15750号,平成23年(ワ)第32072号,平成24年(ワ)第3266号 公安テロ情報流出被害国家賠償請求事件
    口頭弁論終結日・平成25年9月11日
    裁判長裁判官始関正光,裁判官進藤壮一郎,裁判官宮崎文康
    原告 原告1ほか16名,被告国,東京都

    本判決の要旨

    第1 主文

    1 被告東京都は,原告ら(原告4を除く。)に対し,それぞれ550万円及びこれに対する平成23年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    2 被告東京都は,原告4に対し,220万円及びこれに対する平成23年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    3 原告らの被告東京都に対するその余の請求及び被告国に対する請求をいずれも棄却する。
    4 訴訟費用の負担(略)
    5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

    第2 事案の要旨

    本件は,イスラム教徒である原告らが,警視庁,警察庁及び国家公安委員会が,.皀好の監視など,原告らの信教の自由等の憲法上の人権を侵害し,また,いわゆる行政機関個人情報保護法や東京都個人情報保護条例に違反する態様で個人情報を収集・保管・利用したこと,△修慮紂ぞ霾鶸浜上の注意義務違反等によりインターネット上に個人情報を流出させた(本件流出事件)上,適切な損害拡大防止措置を執らなかったことが,それぞれ国家賠償法上違法であると主張し,警視庁の責任主体である被告東京都並びに警察庁及び国家公安委員会の責任主体である被告国に対して,国家賠償法1条1項等に基づき,それぞれ1100万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成23年7月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

    本件の争点は,警視庁及び警察庁による個人情報の収集・保管・利用についての国家賠償法上の違法性の有無(争点1),本件流出事件についての国家賠償法上の違法性の有無(争点2),原告らの損害(争点3),国家賠償法6条の有効性及び原告らの国籍国における相互保証の有無(争点4)である。

    第3 当裁判所の判断の要旨

    1 争点1について

    (1)本件において流出したデータ(本件データ)は,警察が作成したもので,警視庁公安部外事第三課が保有していたものであると認められる。

    本件データには原告らの個人情報が含まれており,原告らには,本件データ中の履歴書様書面等において,所属するモスクの名称が記載されている者,「容疑」欄に,特定のイスラム教徒との交友関係等について記載されている者が多数存在する。中には,宗教的儀式又は教育活動への参加の有無・程度について記載されている者も存在する。

    ほとんどの原告らについては,捜査員が直接に把握活動をすることによって,モスクへの出入状況や宗教的儀式又は教育活動への参加の有無についての情報が収集され(本件モスク把握活動),また,その余の情報は,法務省入国管理局等の関係機関等から提供を受け,又は原告らに対して接触や捜索等を行う過程で収集されたものであると認められる。

    (2) 国家によって信教の自由が侵害されたといい得るためには,国家による信教を理由とする法的又は事実上の不利益な取扱い又は強制・禁止・制限といった強制の要素が存在することが必要であると解されるところ,本件の情報収集活動は,それ自体が原告らに対して信教を理由とする不利益な取扱いを強いたり,宗教的に何らかの強制・禁止・制限を加えたりするものではない。

    日本国内において国際テロが発生する危険が十分に存在するという状況、ひとたび国際テロが発生した場合の被害の重大さ,その秘匿性に伴う早期発見ひいては発生防止の困難さに照らせば,本件モスク把握活動を含む本件の情報収集活動によってモスクに通う者の実態を把握することは,警察法2条1項により犯罪の予防をはじめとする公共の安全と秩序の維持を責務とされている警察にとって,国際テロの発生を未然に防止するために必要な活動であるというべきである。また,本件の情報収集活動が,主としてイスラム教徒を対象とし,収集情報の中にモスクの出入状況という宗教的側面にわたる事柄が含まれていることは,イスラム教における信仰内容それ自体の当否を問題視していることに由来するものではなく,イスラム教徒のうちのごく一部に存在するイスラム過激派によって国際テロが行われてきたことや,宗教施設においてイスラム過激派による勧誘等が行われたことがあったことといった歴史的事実に着眼して,イスラム過激派による国際テロを事前に察知してこれを未然に防ぐことにより,一般市民に被害が発生することを防止するという目的によるものであり,イスラム教徒の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないと認められる。他方,本件モスク把握活動は,捜査員が自らモスクへ赴いて,原告らのモスクへの出入状況という外部から容易に認識することができる外形的行為を記録したにとどまり,当該記録に当たり,強制にわたるような行為がされていない。

    これらを総合すると,本件の情報収集活動は,国際テロの防止のために必要やむを得ない措置であり,憲法20条やこれを受けた宗教法人法84条に違反するものではない。

    (3) 警察は,実態把握の対象とするか否かを,少なくとも第一次的にはイスラム教徒であるか否かという点に着目して決していると認められ,この点で信教に着目した取扱いの区別をしていたこと自体は否めないが,情報収集活動の目的,その必要性,これによる原告らの信教の自由に対する影響に照らすと,信教に着目した取扱いの区別という憲法14条1項後段の列挙事由にわたる区別であることや,精神的自由の一つである信教の自由の重要性を考慮しても,その取扱いの区別は,合理的な根拠を有するものであり,同条1項に違反するものではない。

    本件の情報収集活動自体は,国家が差別的メッセージを発するものということはできず,原告らの国家から差別的に取り扱われない権利ないし法的利益を侵害したともいえない。

    (4) 警察には,国際テロ防止のための情報収集活動の一環として,モスクに出入りする各人について,その信仰活動を含む様々な社会的活動の状況を広汎かつ詳細に収集して分析することが求められ,他方で,本件モスク把握活動によって把握される原告らの行動が,第三者に認識されることが全く予定されていないものというわけではないことなどに照らすと,本件の情報収集活動によって収集された原告らの情報が社会生活の中で本人の承諾なくして開示されることが通常予定されていないものであることを踏まえても,本件の情報収集活動は国際テロの防止の観点から必要やむを得ない活動であって,憲法13条に違反するものではない。

    また,適法な活動により得られた情報を警察が保有して分析等に利用することができることは当然であるから,当該情報の保有が憲法13条に違反することもない。

    (5) 本件データのうち原告らに関する部分の収集・保管・利用は,法律の留保原則や,いわゆる行政機関個人情報保護法及び東京都個人情報保護条例に違反するものでもない。

    2 争点2について

    (1) 本件データは,警察職員(おそらくは警視庁職員)によって外部記録媒体を用いて持ち出されたものと認められる。

    (2) 警視総監としては,いったん情報が外部へ持ち出され,その情報が外部のパソコンに接続されれば,ウィニー等を通じてインターネット上に流出し,不特定多数の者に伝達し,それによって原告らに多大な被害を与えることおそれがあることが十分に予見可能であったから,その情報が絶対に漏えいすることのないよう,徹底した漏えい対策を行うべき情報管理上の注意義務を負っていたにもかかわらず,外事第三課内におけるセキュリティ規程等を実際に遵守するよう徹底する管理体制は不十分なものであったとみざるを得ず,このことが,外部記録媒体を用いたデータの持出しにつながったと認められるから,警視総監には,情報管理上の注意義務を怠った過失があって,国家賠償法上の違法性があり,被告東京都には,本件流出事件により原告らが被った損害を賠償する責任がある。

    (3)警察庁には監査責任者が置かれ,警察情報システムに係る監査を行うものとされているが,その監査権限には限りがあり,監査責任者が恒常的に監査を怠っていたとか,監査によって不十分な点を発見したのにその指摘を怠ったというような事情は認めることができないから,被告国には本件流出事件発生の責任はない。

    (4) 警視庁及び警察庁は,本件流出事件の発生後,原告らの個人情報を含め流出したデータを全面的には削除することができなかったものの,尽くすべき義務は尽くしたものと認められるから,被告らにはこの点についての責任はない。

    3 争点3について

    本件で流出した原告らの個人情報の種類・性質・内容,当該個人情報がインターネットを通じて広汎に伝播したことなどを鑑みると,原告らが受けたプライパシーの侵害及び名誉棄損の程度は甚大なものであったといわざるを得ず,原告らの慰謝料額を各500万円(弁護士費用各50万円)と認める。ただし,原告4は,本件データ中の書面においてテロリストであるような表記をされた原告3の妻として,氏名,生年月日,住所のみが流出したにすぎないことから,慰謝料額を200万円(弁護士費用20万円)と認める。

    4 争点4について

    外国人である原告らの国籍国(モロッコ,イラン,アルジエリア,チュニジア)との聞には少なくとも本件事案に関する国家賠償法6条の相互保証があると認められ,これらの外国人原告らも,被告東京都から損害賠償を受けることができる。

    以上


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